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短 歌  アイルランド編
アイルランド
 
6月7日〜14日


学生の伝言メモの貼られある歴史的建造物の大学校門 (トリニティカレッジ)


征服されし歴史のありて大学のガイド板には英語併記す

日本語を忘れた友がカンパイは忘れずにいてグラスを掲ぐ

暮れなずむ午後十時の街楽しげに若者の行き交う広場を過ぎぬ

吹きつける海風避けて島人は石だらけの畑を石もて囲む

(アラン島) 荒海の漁場に出でゆく男を待ち女は切々とセーターを編む


遠く来て島の食堂に供されしロブスターは大き皿をはみ出す

もてなしのアイリッシュダンスどかどかと食堂の床を踏み鳴らしたり

迫害の歴史が観光の対象となりて風化せるケルト十字架

外壁の石積みくろく濡らしつつ主なき城に雨降り過ぐる

火照ることなくてさびしき耳が聴く断崖を打ちてやまぬ波音


海風をうけてふるえる丈低き草の花たちの懸命の色

渺々とカルスト台地を吹き過ぐる風に短き草かた靡く

幾たびも虹立つ国に妖精の存在を少しわれは信ずる

木々を洗うごとく幾たびも降り過ぎる日照雨の残す虹を仰ぎつ

祈りこめてわが撞く鐘の響くべし見放くる街に今朝は雨降る

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