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短 歌  ドイツ編
ドイツ
5月21日 キール運河通航

戦いの苦き記憶の一つとしてUボートを知るわれらの世代

風とおる菜の花の野を背景に少女は立てり髪吹かれつつ

遠景も近景も菜の花さかり蝶よしずかに運河を越えよ


風の運ぶ教会の鐘の音聞こゆ暮れそめし運河の岸の村より

運河ぬけて出し黄昏のバルト海水照り明るく凪わたりおり
5月30日〜31日 ベルリン・ポツダム

凄惨の死をあまた聞くベルリンに影探すごとき思いに歩む

壁越えて自由求めし人らありきとガイドは淡々と過去形に言う

幾万の血を吸いし土によみがえり立ち上がりたる街を妖しむ


スレートの壁一枚が荒々しく人の心を裂きたる歴史

ポツダムに会談せし人らみな亡くて宮殿の壁覆う蔦のさみどり

戦争を幻と思わせる静かさに泉をのぞき込むナルシスの像

アウトバーンのドライブをせし三時間鮮やかにわが過去となりゆく

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