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短 歌  パリから英国へ編
フラ
  英 国
2000年5月9日 日本出発・・フランスへ

残りの花時折こぼす幹太き桜の傍を過ぎてふりむく

旅に発つ今朝のうぐいす清やかに鳴くを互いに聞きとめて言う

蔓薔薇のほぐれ初めたる一、二輪旅に発つ日の目を悦ばす

あたらしき帽子を少し傾ける旅に発つ日の風は夏めく


やわらかく芽吹ける山を美しと見てより越ゆる日本海の藍

夜とならぬ飛行つづくる機のしたにシベリアの凍てし河が蛇行す

エッフェル塔凱旋門と競技場眼下に見えてパリに近づく

機内食三回に十二時間十五分過ごして着ける夕暮れのパリ


迷路めく長き廊下を幾曲がり館なりしとうパリのホテルは

時差ぼけの二人が歩む夜のパリ大観覧車ゆるゆるまわる


脚高く挙げる踊り子の微笑みに今宵は微笑みかえす楽しさ

明日の夢はもはや語らうことのなきわれらに優しくパリは灯せり
ジョギングの人とボン・ジュールを言い交わし朝のセーヌに沿いて歩みつ
宮殿の石畳敷く前庭は歩みがたくて夫と腕組む

旅の日の写真はつねに仲のよき夫婦の顔をしているわれら


聖堂の薔薇窓透きてくる明かり信仰のなきわれにも及ぶ

薔薇窓の明かりに見えて時世経し祭壇の手摺り黒き艶もつ

血塗られし歴史しずかに語らるるコンコルド広場のはつ夏の風

シャンゼリゼの通りにつづく街路樹は緑の匂う風解き放つ

昼食にレバノン料理を試すなどしてうきうきと旅にいるなり


午後九時の眩しき日の差すレストラン平目のムニエル食べあましたり

菜の花に麦のみどりに羊の群れ田舎道ゆけばいつも眠きわれ

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