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茫茫漫遊記 バルカン半島西部編



   
  
             
    スロベニア     スロベニア  クロアチア・モンテネグロ    クロアチア

オバティアの朝 夜の海に向く窓の辺に椅子を置き遠き人を恋うる歌口ずさむ
時差残る身を刺すごときまぶしさよアドリア海にうつる朝日子
朝明けの凪ぎ渡る海を過ぎりゆくヨットは夢の様な静かさ
山峡の小さき教会のドア開く日曜礼拝の村人のため

日曜の礼拝を終えて連れ立つは峡の村人の純朴の顔

石造りの家に狭まるごとき路地仰ぎ見る空の青の鋭さ

日本の総理辞任のニュース聞く城壁高き異国の街に
世界遺産の聖堂高くある街に修道女穏やかに堂を案内す

聖母子像に手を合わせているわが傍に修道女は静かに頬笑みて立つ


遠き日の戦の様をおもわせる迷路に似る道をのぼりてくだる
シベニクの街路

青く穏しき海を見て立てば身に響く教会の古きオルガンの音

青く穏しき海を見て立てば身に響く教会の古きオルガンの音

聖堂に近きホテルは部屋毎に磔刑のキリストの像を掲ぐる

飛ぶ雲のそれぞれにそれぞれの速度ありてオリーブの山に影を映せり

誇り高く「自由と自治」を守りし街のすり減りて艶持つ石畳道


心いまもたたかうごとしネクタイ売る店の女はユーロを拒否す

ネクタイと人形を買えばよしとして広場の椅子にジュースを飲めり
ドブロブニクの小路 世界遺産の街に購う人形の青き目はアドリア海をたたうる

民族また宗教が内戦に繋がるとう理解出来ぬわれが触れがたきこと
遠き日の戦の傷が今も疼く廃墟に残る砲弾の跡

銃痕の残る廃屋道の辺に見るのみに過ぐ観光者われは

内戦のあと十二年の国を行く砲弾の跡残る廃墟など見て

珍しき鳥のごとくに朝空を飛び交う燕を見て旅にいる


城門にチトーの彫り残るコトルの街遊ぶ幼子よ悲惨を知るな
ロブスターの昼食 道の辺に枝のばしいるオリーブは若きみどりの実を数多もつ
山はだの大木となりしオリーブはたっぷりと陽をあびて艶めく
十五世紀の時計塔は憎悪も愛も見て今あるわれをも見下ろして立つ

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