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茫茫漫遊記 バルカン半島西部編



   
  
             
    スロベニア     スロベニア  クロアチア・モンテネグロ    クロアチア

荷一つの身軽き旅に発つわれを見送ると夫は門に出で来ぬ
一人旅はじめると来し空港にたどたどしく異国の言葉を使う

ダリの絵のようになだれてゆく雲を金に縁どる夕陽の遊び
時差七時間飛行九時間の地につきて遠き人いよいよに遠くなりいる
雨となりし真夜ことのなく越えてゆく国境の灯り眩しくにじむ
時差こえてつきし異国は小雨降る真夜の闇なりあてども知らず
ざわざわと身をゆする音たてて居り真夜のホテルの前庭の樹々
朝光のいまだ及ばぬ湖に教会は白き影落としいつ

湖の上にわが悲しみはわたりゆけ教会の鐘を突きつつ思う

教会の鐘に籠めたるわが願い湖を渡りゆく音しばし聞く

願いごと叶うと聞きて鐘を撞く太く重き綱に力をこめて

物語に聞く昔より湖に響きし鐘を今日わが鳴らす 

這いのぼる蔦紅葉せる城の窓みずうみを見放くるわれを立たせる
顔を挙げて笑うことのなき聖母マリア浄く汚れぬもののかなしみ
秋の日の少し差し入る聖堂の片隅に心を残して出でぬ

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