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茫茫漫遊記 バルカン半島西部編



   
  
             
    スロベニア     スロベニア  クロアチア・モンテネグロ    クロアチア

七時間の時差ある国より無事ですと毎日ひらりと葉書を飛ばす
古き街に鐘の音とおり来る時の澄み行くごとき心あやしむ
苦く甘きシオチョコレート試食して舌に残る微かな塩の味言う
自らの姿を見よと市庁舎の前にナルシスの彫像ありぬ

聖堂につづく路地を埋めて花を売る店あれば嬉しく心をよせる
動きはじめし街をみおろす山上の城を幻と見せて朝霧
通勤の男がローラースケートを走らせてゆく石畳の道
鍾乳洞の暗闇に育つ石筍にはかりがたき万年の単位はありぬ

憶光年の単位にはかるこの宇宙にわが生きていることの儚さ
照明の瞬時消えたる鍾乳洞暗黒の重さは人を圧する
鍾乳洞の形成を説く若きガイド百五十万年と軽やかに言う
目を持たずに生きる洞内の動物を類人魚と名付けし理由怪しむ

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