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茫茫漫遊記 土耳古編


イスタンブールへ
トロイからエフェソス コンヤからカッパドキア 再び
アンカラ イスタンブール

サルタンの露台
穏やかにわが機は海を越え山を越え七時間と言う時間を超ゆる

わが影もこの中にあり滑走路に置く影黒く機は着陸す

まざやかにオリオン舞い立つ空を飛び星にはなれぬわが機の灯り

星となれぬわが機の灯りを仰ぎ見て哀しめる子もやがて眠らん

十一時間夜を飛び続け真夜中に着きたる国の遅き朝明け

真夜中のイスタンブール異教徒のわれを沈めてゆく深き闇

暁暗に漂い来たるコーランの声に目覚める旅の始まり

運転手のフセインとう名前聞きてかすかに思いゆれるあやしさ


安いよと繰り返される日本語に孤独深めてバザールを出る

迷路めくバザールの小店並べある偽トルコ石の青が微笑む

骨董のようなトルコのバザールに「スズキサン」と呼びかけて男が笑う

宮殿の門の窪みに坐る猫に見定められている人間の群れ

宝物殿の色絵の皿鉢は伊万里焼き灯に照る紅は眼に鮮らけし

霧の中に霞む海峡を見て立てば茫々たり戦かさねたる過去

沈む日を愛でてサルタンの立ちしとう露台より見る海霧深し

海を望む宮殿の東屋のレストランに飾り気のなき昼食を摂る

二千年を経し城壁が盛衰の哀しみ抱きて海峡にむく

宮殿も古き砦も博物館となり新しきトルコを外車が走る

遠ざかる岬の明り水面に揺れ異国の海峡を一つ越えたり

「七時間の時差ある国に来ています」絵はがき一枚ポストに入れる


君とわれに七時間の時差あることの不思議さよ熱きシャワーあびつつ

信仰を持たぬと言い切るガイドとゆくイスラムの国晴れまた曇り

常緑の街路樹はオレンジつやつやと美しき色せり冬の日ざしに

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