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茫茫漫遊記 スペイン編
トレド。セゴビア・マドリッドから アルハンブラ経由 バルセロナへ
    


幾たびも入場券をチェックされ歴史の澱みの中に入りゆく
風化せる石積みの上に薄目をあけてわれを見ている猫に怯みぬ
絵はがきと見ゆる風景の中にいて身じろぎもせぬ大き黒猫
差し交わす枝の葉陰に胡桃食む栗鼠も見て歩む庭の静かさ
後宮の庭にいくつか咲き残る紅濃き薔薇に寄りゆく心

咲き残る小さき薔薇の紅の濃し王女の恋は語りつがれて


遠き世より音のひそけく湧く泉知りてかなしき伝説いくつ

遠き日の戦に思い及ぶなり石榴の木下に聞く水の音

鮮血を洗い流せしとう話聞くひとところにじむ大理石の床

ここに佇ちし美女幾たりの物語想いつつつゆく長き回廊

美しき庭に向く窓に寄りて聞く物語は過ぎて行く風音に似る

宮殿の影と空を映して森閑たりシェラネバダの水みたしたる池

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