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茫茫漫遊記 スペイン編

トレド。セゴビア・マドリッドから アルハンブラ経由 バルセロナへ

異国語の飛び交う空港の雑踏の中にいて少し遠くなる日


夜なのだと思いこませて時差七時間超ゆる飛行機の窓を閉ざしぬ

真夜中のマドリッド空港自らの靴音響くを聞きて歩みぬ

暑く乾く細き路地奥に暮らしありて肉屋も八百屋も愛想笑いす

幾千年を厚く重ねし古き街に人は花を植えて生き継ぎており

角とれし石畳道は歴史の迷路細々とつづくをのぼりてくだる


ゲットーの白き塀囲む細き路地ジャスミンの花散りこぼれいる

ほとりと髪に散り来しジャスミンの花を歌書く手帳にはさむ

アッラーアクバルの声か澱める列柱の森ありて暗しモスクの跡は


円柱の森の暗がりにぽっかりと天が啓けて聖堂が建つ

モスク跡のひろき中庭蜜柑の木が影をゆらして人を憩わす

白壁の細き路地よりのぞき見る穏しき生活あり緑のパテオ

異国の旅に見る夢はいつも悲しくて幾たびも同じ迷路を辿る

神のなせる業また奇跡と仰ぎ見るローマ水道橋は街を横切る


聖堂の塔よりひびく鐘の音聞きて仰ぎ見る空のまぶしさ

スペインの生ハム載せて供されし白きメロンは少し大味

ゲルニカの悲惨を思えとう黒白の大画面は近づくことを許さず

すがいたる金髪の少女によく似合うゲルニカを描く黒きTシャツ
開くたびにかすかに匂うジャスミンの花押してあり歌書く手帳

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