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茫茫漫遊記 松山・屋久島・宮島編



松山・道後・内子・大洲
          屋久島        広島・宮島


松山の城の石垣三月の日ざしを浴びてほのかに温し

城山の石垣の辺の紅ざくら目白があまた寄りて花揺る


宿の下駄鳴らして歩めば坊ちゃんと逢える気がする道後の町は

漱石も坊ちゃんも生きて松山はレトロな電車が走る街なり

三畳の勉強部屋に置かれあり子規の文机と黒き硯箱

色変わりし漱石の原稿几帳面に升目を埋めいる文字

少年の子規の使いし文机のまこと小さく窓辺に置かる


坊ちゃんのカラクリ時計を見上げつつ朝より足湯を使う人おり

どーんと置かれし石の湯船より湯の溢るる道後温泉にわれは来ており

夕かげる石手の寺の門の辺に晶子の歌碑の小さきを見つ

床屋とう染め抜き暖簾が揺れており内子の町の静かな通り

枡席の古りて残れる芝居小屋奈落の底に見学路あり

夫のみが観客でいる芝居小屋の舞台にわれは見得切る真似す



豪商の屋根の飾りは鏝絵の鶴芝居小屋の屋根には狐が坐る

つくばいをやわらかに覆う苔のみどり茶室に向かうわが心澄む
鈴鳴らし遍路の歩む道の辺に菜の花明かり風にゆれいる

何を祈ると言うにもあらず遍路の寺あれば手を合わす旅人われは

伊予柑も椪柑も買う暇なく砥部焼きの三枚の皿重く持つ

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