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短 歌  オセアニア編
ニュージーランド   テカポ湖とよき羊飼いの教会

匂やかに薔薇咲かせおり英国を母国となせるこの国人は

ウェリントンの埠頭に立ち並ぶ倉庫群壁面に描かれてありし浮世絵

街の中を上下するケーブルカーの運転手写真をとると言えばはにかむ


マオリ族の死者の魂をふるさとに誘うという樹にあふれ咲く花は

胸厚きマオリの男が眼を剥いて舌を出し歓迎の踊りを始む

指先を細かくふるわせて踊りつつマオリの女の笑む意味知らず

放たれて草食む幾千の羊いて人影は見ずに草原過ぎる

思おえず髪を意識す森閑と空を映せる氷河湖の蒼
マウント・クックとヒラリー卿

夕焼けの雲は流れて朱に染みしマウントクックの雪を見せたり

神の住むと聞きて仰ぎ見るマウントクック幾筋も白き氷河が走る

藍の濃く更くる山の空星を見るツアーがあると誘う人あり



カーテンを開けば不意に天を貫く山ありて怠惰の身を打つごとし

ラウンジのストーブに太き薪萌えて夏山のホテルは朝迎えおり

「また来ます」とゲストブックに記したりこの国にわれの残し置く文字
クライスト。チャーチ

    不可欠な存在のごとくピアノ弾く男おり夜の古城レストラン

前菜のエミューの肉の薄切りをエミューの姿思いつつ食ぶ

デザートを食べぬ夫の分も食べ今宵はダイエットを言わずに過ごす


教会前の写真スポットにイスを並べ日本人の写真屋が客を呼びおり
異国の街に客を呼ぶ日本人写真屋の作り笑いに気づかぬふりす
雨上がりの街の夜景を見放けて立つ生きていることも夢に似ている
永遠を意味するマオリのお守りを旅終わる日にひとつ購う
マオリ族の素朴なお守り首に架け昨日より幸せになりしかわれは

水音のせぬ川岸にスコット大佐の白き像立つ鳩遊ばせて

日曜の大学キャンバスに影を置く太き桜より鳥の声降る

戦いに行きし人を偲ぶ美しき門を過ぎて風はいずこへ通う



追憶の門を過ぎ木々の梢を過ぎ花を揺りてわれに吹く風は来る

歩に添いて匂いたゆたう薔薇園をめぐりつつ思う人あまたあり

夫の買うマオリの戦士の人形は青貝はめし大き眼を開く

冬の最中の日本へ向かう暁暗の空に浮き立つ蒼き塔を見て

島影も見えぬ蒼き海と遠き雲見つつけだるく赤道を越ゆ

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