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短 歌  オセアニア編
タスマニア・囚人の造った石橋と教会

道ばたのうばら苺の実を摘みて食ぶる遊びもしつつ旅する

タスマニアの田舎のレストラン飲み水を空き瓶に入れて卓上に置く

花の名を幾たびも聞き忘れてはまた聞きて忘れ旅するわれは

幾千年の波の営為の跡として岩盤のアーチは海をまたげり

デビルス・キッチンとう名の断崖が立ち上がる海の静かさをふと妖しめり

石造りの古き教会を統べるごとしステンドグラスのひとつ明かり窓

囚人の造りし堅固な石橋の二百年経りしをバスはわたりぬ
ポートアーサー監獄跡

頬白鮫の棲む海を理想の囲いとせる監獄に高き教会の塔


獄死せる人を埋めしとう小さき嶋みどり濃く見えて海は凪ぎおり

パンを盗み流刑七年とう記録ある監獄跡にユーカリの咲く


孤独と言う拷問を課されし囚人の過ごしし房の壁崩れいつ

狂わずに過ごしし囚人を妖しめり石壁厚き独房の跡

雲切れて不意に差し入る光動く廃れし独房の石壁の上
サウンド航行

南氷洋の捕鯨を楽しげに語りたる人を思えり海荒るる日は

フィヨルドの入り江深きに船とめて影のごとくに漁りいる人



照り翳り雲が影おくフィヨルドの平らかに見えて単純ならず

峙てるフィヨルドの岩肌をあらうごとく千筋の瀧筋なして立つ

フィヨルドに落ち来る瀧に架かる虹ほのぼのとして微笑むごとし

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