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茫 々 漫 遊 記 ・ 長 浜 ・ 彦 根 編
その1
その2
 
 竹生島宝巌寺

往復切符買うならわしの身につきて帰るが決まりの旅するわれは

竹生島をチクブジマと読めぬ若きらと老いしわれらが乗る白き船

カワラケを抛りて願う習わしのありて従う期待などせぬ


お賓頭廬の頭をなでてひたすらに願うはひとつ「惚けないように」
竹生島に渡船まちいる夕暮れは森に宿りする鵜の群れさわぐ

竹生島を離れる船を追うごとく森のヒグラシの声とおりくる

夕暮れの空を映せるみずうみに光る水脈曳く白き渡船は

船腹の飛沫にたまゆら小さき虹見つつ夕づく湖をわたりぬ
彦根城博物館・能舞台

古い楽器・展示品 城山の不揃いの石段登りゆく脚病む夫は修行のごとく


勝者また敗者と言いて括らるる戦のありき古き近江に

勝者にも敗者にも耐えて過ごしたる女らありとふとも思いつ

恩讐も確執も今はあわあわし城山の道の露草に花

時じくの雨に茶亭の軒借りてゆくりなく頂く薄茶一掬

湖に流れ入りたる血を思う近江の古き戦ものがたり


血塗られし人の歴史と関わらず魚の生きつぐ湖の穏しさ

過ぎて行くわれの時間を見よと言うか夜の湖は音もたぬ闇

縁ありて夏の終わりに逢う人ありて夕かげり来し湖を見て立つ

夜の湖にしずかに立ち来し風ありと髪ゆれてわが耳に囁く

洗い髪肩にひろげて湖を渡り来し夜の風に親しむ


みずうみの渺と暮れゆくしばらくの思いはなべて過ぎゆきのこと

たわいなき話題に更かす夜にのむ赤きカクテルに黒きストロー

誰か知らぬ肩に手を置く人の居り湖の夕光に誘われし夢

対岸の明かり映して湖は凪ぐ今宵は悲しむ人無きごとく

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