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茫茫漫遊記 日光 ちょっと紀行
中 善 寺 湖 日 光


硫黄の香しるき出湯に身をしずめ目つむりて心揺れるにまかす

真夜中のホテルの庭に来し鹿を言いて二人は窓辺にすわる

白き小舟と雲を揺らして楽しげな朝の湖なり風は口笛


夏雲の名残を映す早朝の湖に沿いてゆく中禅寺まで

朝早き中禅寺湖を渡る風白波たつと言う程ならず

蔦紅葉して人去りし別荘にほの赤く熟れている四照花

一筋に落ちる荘厳の滝に立つ不動明王われを圧したり

交わす言葉聞こえぬもよし滝の前に老いし二人は身の冷えて立つ

昨日は登り今日は下りゆくいろは坂バスの乗客は言葉交わさず

参道の木下につづく石積みに時世経て深し苔のみどりは


秋日ざし穏しとゆけば奥の院への門にふわりと眠り居る猫

甚五郎の猫の眠りの夜は覚めて寺庭を駆くることもあるべし

四百年経りても狂いなき石段が家康の廟まで長くつづけり

死なばみな屍となるのみなれど祀られて華やぐ家康の死は

祀られし家康は思いの他のことみな仰ぎ見る日暮らしの門


神馬とうさだめを負いし白き馬厩舎に足掻きを繰り返しいる

足掻きして人を無視しているごとき神馬は潤む大き目をもつ


携帯電話を無言に遊ぶ高校生乗せて日光線はゆっくり走る

日光の小さき駅舎の貴賓室に靴脱ぎて赤き絨毯を踏む

貴賓室のみがかれし鏡の華やかに映せしものか大正・昭和

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