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茫茫漫遊記 札幌・旭川編


                 

真夜中の列車待ちいる二時間に読んでは閉ざす「歌よみに与ふる書」

津軽海峡過ぎて早朝の展望車車窓の緑を独り占めする

冬は凍る運河の岸に咲き出でて蒲公英の黄の揺るるまぶしさ

のんびりと欠伸などしてわれらを見る獣らのいて春の動物園

カシャカシャと山あらしが毛を逆立てる思いもかけぬ大きその音

われらを見て何を思うか並び立ちペンギンの群れは身動きもせぬ

威風みよと行きつ戻りつしてみても檻の中なり大き白熊

水槽の水を光らせる場所決めて遊びつつ泳ぐような海豹
小雨降る動物園は静かにてわれらを窺うごとき猿たち

北帰せぬ白鳥しずかに羽をたたみ雨の水面を揺らして過ぎる

小雨ふる池の岸辺にフラミンゴの首しなやかに羽をつくろう
山に逝きし夫の遺骨を山に散くと友は言いつつ仰ぐ朝日岳
遠く仰ぐ朝日岳は雪を被きおりここに逝きて眠る人思わせて

思いがけぬ人に会うかも知れないとリラ咲く街を行けば思わる

リラの咲く公園に来て啄木の石碑のうた声に出して読む

四十一の歌碑北海道にありと聞く老いを嘆かずに逝きし啄木

啄木の石碑のうた読みて立つ大通り公園はリラ匂う風

遠き世に生きたる羽虫を閉じこめし琥珀のペンダント揺れるわが胸

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