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くくたち・ふくたち


白菜はアブラナ科の葉菜で、分類学上では、カブ・コマツナなどと同種で、中国北部の原産で、明治初期に日本に入って来たのだそうですから、万葉集の「くくたち」時代には無かったものでしょう。 要するに「くくたち」でしょうが、これが「ふくたち」と言う名に呼んだのは、雪国の人たちの食材を得た歓びだったのでしょうか。 ただし、東北地方の人は「ふくたち」と軽やかな発音はしません。「ふぐだぢ」と呼びます。 春の若菜摘みは万葉集の巻一の最初の歌の 「籠もよ み籠もち   ふくしもよ みふくし持ち  この丘に 菜摘ます児…後略」 と言う雄略天皇の御製歌にまず見られるのですけれど、「くくたち」「ふくたち」の短歌は見つけられませんでした。 そんなわけで、春先に萌え出て食用になる蔬菜の類の茎立ちを総じて、こう呼んだと考えて、その短歌を入れてみました。
ふくたち(くくたち青菜のことでしょう) 「くくたち」は「茎立ち」です。「くく」は古語。青菜の類のものから、いわゆる薹ががたって花をつけますが、その薹の若いところを「くくたち」と言ったものです。 万葉集(3406)に 上野の佐野のくくたち        折りはやし あれは待たぬゑ今年来ずとも があります。これは 菘(スズナ)の茎立ちのことのようです。スズナは青菜または蕪の別称です。 秋田県の南部・湯沢雄勝地方では雪解けのおそい畑に去年取り残した白菜の茎立ちを「ふくたち・ ふぐだぢ」と呼んで、春先の食材とします。この頃ではこの「ふくたち」を「春待ち菜」とか名付けて、栽培して関東方面にも出荷して居るそうです。青菜や蕪のくくたちも食べられますが、白菜の方が格段に美味しいです。 宣伝文句によりますと「低温でじっくり生育し甘みも抜群、しかも無農薬です。お浸しや和え物、鍋の材料に、皆さんも是非一度ご賞味ください。」ですって・・・。

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