けし
 
     
 
  短歌・俳句
 
 
 
 
    罌 粟 ・ ケ シ ・ 芥 子

母は真っ赤なオニゲシを毎年庭に咲かせていましたので、罌粟の花と言うと私はオニゲシの花を思い出します。でも与謝野晶子の罌粟は「雛罌粟」でした。そして私がフランスの野辺で口ずさんだのはやはり雛罌粟の歌でした。
何故なのでしょうか。フランスのやわらかな丘のつづく野辺を渡る風には大きなオニゲシは似合いません。かすかな風でもふわふわと揺らぐような雛罌粟が似合う・・・。鉄幹のもとへとフランスに渡った与謝野晶子。雛罌粟の咲く野を火の色として見ています。本当に情熱的ですよね。
  ケシ科の一年草。

地中海が原産地。高さ一〜二米。五月頃に、カラフルな花を咲かせます。白果種のものはアヘンが出来るため、栽培が禁止されていますが、アザミのような葉を持つアザミケシ、大きい真紅の花を咲かせるオニゲシなどが観賞用に植えられます。
ヒナゲシも同じケシ科の一年草ですが、こちらは虞美人草と別称されるように、スマートでなよやかであでやかで美しい女性のような印象を持ち、白、赤、ピンクなどの色紙で作られたような、薄い花びらをつけて愛されます。罌粟また芥子の字をあててどちらも使われています。

<古代中国のお話−「虞美人草」> 項羽(こうう)と劉邦(りゅうほう)の 最期の戦いのとき、項羽は愛する虞妃(ぐき)と ともに劉邦の大軍にまわりを包囲された。 項羽は別れの宴を開いてから最後の出撃をし、 虞妃も自刃して殉じたが、 彼女のお墓にヒナゲシの美しい花が咲いた。 そのため人々はこの花を 「虞美人草(ぐびじんそう)」と呼んだ。 (悲しいお話です)