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スキー落第記

 こう言うのも何ですが、私はスポーツまるで駄目人間です。鉄棒にぶら下がれば「新巻鮭」状態。と、言っても切り身ではありません。
 歳末なんかにお魚屋さんの店先に吊されている状態です。今ではぶら下げられている新巻鮭なんか見ることもなくなりましたけれど。
 100メートルの徒競走も、8人で走り始めて、トップの人がゴールしてそこで引き返したとしますと、その人がスタート地点に到着するころに、やっとゴールにつくと言うほどのノロマ。考えるのさえ難しいでしょ。
 秋田県は雪国で、スキーなんか誰でもうまく滑れそうにおもえるでしょうが、それもまた駄目。 
 高等女学校の時、スキーが体育の教科になっていましたが、私が滑るとスロープに穴があいてしまうから、見ていなさいなんて言われました。悔しいから滑ると、今みたいな防水のスキーウエアじゃないですから、お尻がびしょびしょになり、その上寒さで凍ります。それに長靴スキーです。
 同級生にもう1人同じ状態の 庸さんと言う子がいました。私と庸さんはいつも、スキー練習から帰って来る頃は、お尻がガパがパ鳴るくらいに凍りついていました。
 集中暖房なんか考えられない時代。薪ストーブです。着替えなんか持っていっていませんから、下着まで濡れたズボンを着たままで乾かさなければなりません。
 二人はまずストーブの上に腰をおろして、冷凍状態のお尻部分を柔らかくします。ジュッと音を立ててとけ出しますが、余り長く坐っていると今度は熱い湯気がお尻を焼きます。ハハハハでしょ。
 私達には教えてくれる人もいませんし、笑われるのは笑われっぱなし・・・。そんなわけで庸さんとは親友です。
 そして現在、スキー場はリフトで上まで運んで貰えますよね。スキーの上手な人はみんなスキーリフトの体験がおありでしょうけれど、私にはないのです。 スキーはともかくとして眺めがいいだろうなと憧れていました。
 主人は私よりも年上ですし、スキーもクラシック。長靴スキー体験しかありません。
 5年前のこと。「行ってみよう」と言う主人について行ったのが近くのスキー場。ゴンドラのリフトに乗ろうと言うのです。天気が良いですから沢山のスキーヤーで賑わっていました。
「往復 2枚!」
 売り場の女の子が笑います。スキーを持たず、ただスキー場のゴンドラに乗る人なんて、本当に珍しい・・・。往復なんてそれまで体験がなかったのではないでしょうか。
 その日は特に最高のスキー日和だったんですから・・・・。
 ゴンドラから下を見るとスロープではみんな楽しそうです。スロープからはずれたところには兎の足跡が見られます。眩しい雪景色でした。
 頂上で降りると、遙かに日本海の方まではるばると見渡せます。眩しい雪景色でした。命の洗濯でこれは主人のよい選択でした。
 スキーの得意な方のお話を聞いて、私はこんな落第記をおみせしたくなりました。
 可哀想にこんな不器用な人間もおります。
 でもたった一つ水泳だけは4スタイルOKです。のろいですけれど・・・・。あ、それから臆病ですから飛び込みは駄目です。

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