不如帰の鳴き声を今年は一度も聞かないでしまいました。町ではもう不如帰の来る木が無くなってしまったのでしょうか。私がこの町に来た頃は郭公、鶯、山鳩に煩いくらいの雀に燕、夕焼け空には鳶が鳴きながら悠然と飛びめぐり､夜は梟の鳴き声が聞こえたものでした。蝉が鳴き､蛙が鳴き、秋には蟋蟀に鈴虫、馬追、などなど虫の声が賑やかでした。この頃では､向かいの山を塒にしている鴉が朝夕賑やかに鳴いているだけです。静かな庭にホトトギスの花が盛り咲いています。